多くの人の愛情を受けて飛び立ちました。
すぐに遠くなってしまったふる里日本に”さよなら日本”と言いました。
涙がこみ上げてきました。
日頃のヒネた妄想も、地上に寝起きしている間の苦悩も、
全部空振りに思われました。
ただ大切な人の心配に切迫した顔だけが胸をつまらせます。
現実は、未知の外国を予告し、僕は未だにそれを信じられないでいます。
この旅は僕に何を教えてくれるだろう。
多くの人達にまみれながら、僕だけの秘かな緊張と体験は
何を答えとして出すのだろう。
僕という個人の世界へと敷居をまたぐ意味はなんだろう?
ただこうして文章を書くことだけが落ち着くのだ。
今日は言葉も選ばず、考えることもない。
想像の世界であった異境の旅行が、現実になるという客観的事実を
ただ、真っすぐに見つめなきゃと思うだけだ。
スチュワーデスの微笑みも、僕を本当の安心へとは導いてくれない。
ぐっと飲んだ Beer の味も、フランス行きという掲示も、僕の心にはうつろに
響いている。
外は、なぜか現実の高い空、下は、青く、海らしいのだ。