ある日 虫は 花に添いながら 顔をあげて周りを見た
たおやかな つぼみの赤く 開くのを見た
黄色なめしべが ぬれて そぼるのを見た
そのそぼるつぼみは苦しそうだった
虫はその苦しみをわかちあいたいと思った
まっかな花弁をおしわけて蜜をなめて すいたいと思った

虫のこころが熱くなる
虫は花にほほをすりながら思った
この花の悲しみと あの花の苦しみと
どちらもすいたいと。
虫はこころが苦しくなった
苦しくて周りをみると
虫の周りにはたくさんの花が苦しんでいた

虫は倒れていた
虫はこきざみに震えながら 苦しみにたえていた
花が苦しみの媚芳を放つ中で
虫は最後の息をひそめて死んでしまった


虫のなきがらは花の養分となった
きょうも変わらずに花は咲いている